特別インタビュー! 昭和45年創業 子供たちを見守り続ける文房具店の店主

   

昭和45年創業子供たちを見守り続ける文房具店の店主
札幌市厚別区青葉町には、創業以来子供たちの成長を見つめ続けてきた文房具店があります。店の名は「髙和堂」。店内には文房具やコミックのほかに駄菓子が所狭しに並べられ、おこづかいを握りしめた子供たちが訪れます。

約半世紀にわたって愛される理由を、店主の髙橋和雄氏にお尋ねしました。

もう一つの学校

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髙和堂は駄菓子が豊富なお店です。最初は文房具と雑誌と玩具の3つが主力でしたが、近くに大型商業施設ができてから玩具の売り上げが激減。かわりに駄菓子を置き始めたところ、子供たちの評判がよく、気が付けば店の一角を占めるほどになったそうです。

駄菓子の値段は10円~50円くらい。子供たちは決められた予算内に収めるため、必死に吟味し、計算しながら選びます。この店は、界隈に住む子供たちの「もう一つの学校」です。店主の髙橋さんは、そんな姿を温かく見守り続けてきました。

そこはタイムトンネル

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真新しい住宅街の中にある古びた木造雑居ビルの1階にある髙和堂は、まるでタイムトンネルのよう。厚別区青葉町は、なだらかな丘があり、かつてはリンゴやジャガイモ、野菜などの作物がつくられていました。

昭和37年から43年にかけて大規模な宅地造成が進められ、新興住宅地として多くの人が集まり、賑わいを見せていきます。当時、札幌市内の老舗書店の文房具部門で働いていた髙橋さんは約6年で脱サラし、昭和45年に20代の若さで、自分の苗字と名前から一字ずつ取った「髙和堂」を創業しました。

かつては札幌随一の住宅地

当時の青葉町は札幌有数の人口を誇り、近くの小中学校はマンモス校として子供たちが溢れかえっていました。文房具や雑誌も売れ、当時発行されていた旺文社の「中一時代」は、予約だけで100冊をキープ。配達も大忙しでした。その販売数は旺文社から表彰されるほど。

一時は3店舗まで拡大しましたが、大型商業施設やコンビニの増加、人口の減少などにより雑誌は縮小していき、今は2店舗となり病院や美容院などの配達をメインとしているそうです。

出版業界は不況の時代

ここ数年、「出版不況」と呼ばれるように、出版物の売り上げが下がっています。日本の出版界が最大の売り上げを上げた年は1996年。この年、対取り次ぎで2兆6563億の売り上げを記録しています。

ときはすでにバブル崩壊後。それでも最大の売り上げを達成したことに、「不況に強い出版界」という神話までできました。しかし、出版物の販売額は徐々に減少。かつて人気だった雑誌が次々と廃刊に追い込まれています。

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出典: 公益社団法人全国出版協会

出版不況の原因として、人口構成比率の変化・少子化と生産年齢人口の減少、インターネット・スマートフォン・タブレットの普及、大型新古書店の進出と利用拡大など、様々な理由が考えられます。いずれにせよ不況に強いと言う神話は崩壊し、新たな時代に向かっているのは確かです。

出版物の販売数が減れば、書店も影響を受けます。全国の書店の数は年々減りつつづけ、書店がゼロの市町村も少なくありません。また、書店の大型化が進む一方で、個人経営の書店は軒並み数を減らしています。そのような状況の中で髙和堂は半世紀に渡り、地域に文化を発信し続ける希少な「知的財産」なのです。

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出典:日本著者販促センター

小さなスペースで効率のいいラインナップ

現在、髙和堂の本はコミックがメインになっています。どのコミックを仕入れるかは、店主のセンスによるものらしく、問屋からもらう一覧や、業界が発行する売れ筋を紹介する冊子を参考に仕入れています。

髙橋さんの目利きは確かなようで、お店の棚には人気のコミックがズラリ。筆者が「このコミックは売っていないだろう」と思い立ち寄ってみると、しっかりと棚に並んでいて驚かされることも。「コミックの選定基準は長いことやっていれば、なんとなくわかる」と謙遜しますが、数々の個人書店が倒産する中、長く営業を続けられる源は、この目利きにあるようです。

子供たちは駄菓子で一攫千金!?

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文房具と雑誌が並ぶ髙和堂のメイン商品の一角を形成しているのが駄菓子です。玩具を撤退させた場所に駄菓子が増殖し、子供たちの間では、髙和堂=駄菓子屋のイメージが定着しています。どれくらいの種類があるか、髙橋さん自身も把握していないほど豊富。仕入れは問屋発注のほか、自ら仕入れることも多いそうです。

小学生が当たりくじを引き換えに来ました。10円の商品を買って当たりが100円! この「一攫千金」が大人気なのです。

お店を通して人生を見つめる

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「どれくらいの子供たちを見てきただろう」お店を通して、様々な人の人生を見守ってきた髙和堂と髙橋さん。離婚してこの地に舞い戻ってきた人や、駄菓子を買いに来ていた小学生が親となり子供を連れてくる人、北海道を離れて東京で暮らす人が、ツーリングがてら苫小牧港から直行するなど、「かつての子供たち」は今でもお客さんです。

変わりゆく街や人の中で、いつまでも変わることがない髙和堂は、大人が子供に戻れる大切な場所なのです。
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「ずっとこのお店を続けてくださいね」と、髙橋さんに伝えると、「この建物も古いから、立ち退きの話が上がっているんだよね。」と衝撃的な答えが! 新築物件だった木造の雑居ビルは老朽化が進み、冬は室内で凍えるほど寒くなるとか。

「立ち退きは直近の話なんですか?」と聞き返すと、「10年も前から立ち退きの話はあったんだよ」と笑っていました。髙橋さんには、ずっとこの場所で、子供たちを見守ってほしいと強く思いました。

店名    髙和堂[コウワドウ]
住所    〒004-0021 北海道札幌市厚別区青葉町7丁目7-21 末沢ビル 1F
TEL/FAX  011-891-0043
定休日   不定休

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