新卒社員早期退職希望物語

      2016/09/06

新入社員が入社して、3年以内に離職するパーセンテージは、大卒で30%以上、高卒で40%以上、中卒で50%以上と言われています。しかし企業によっては離職率が極めて低い会社も存在し、早期離職を「個人の問題」で片づけるには、無理があるように思います。ここでは「なぜ新入社員は早期退職を選ぶのか」を社員側・企業側の両方の側面から検証します。

入社早々「辞めたい」と相談を受けました

筆者は長らく4年制の専門学校の教員をしてきましたが、今年就職したA子から早々に「もう辞めたい」と連絡をもらいました。理由を聞いてみると、勤務時間や給料などの待遇が、入社前の説明と食い違っていたそうで、「詐欺にあった」と大騒ぎです。

A子の不満

基本給や年間休日数は提示されていた通りでしたが、最初は「土日祝日が休み」と聞いていたのが、実際には「平日を含む不定休」であり、賞与額も曖昧になっていることも不信感を持ったようです。また研修会や勉強会などの営業時間外の業務についても、「任意」と言う名の「強制参加」により、残業代が出ないことも不満なようです。

また、何も改善しようとしない上司に対して不信感を募らせ、現実とは程遠い会社の理念に対しても不満が爆発。難関な国家資格を取得して就職しただけに、「あの時の頑張りは、こんなことをするためだったのか!」と、怒り心頭です。

これまでとのギャップ

ウェブサイト「転職会議」に、新入社員の退職理由の最新データが掲載されていました。結果を見ると、A子のみならず、新入社員に共通した不満があることが分かります。それぞれの理由について細かく考察してみましょう。
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出典:

時間外労働が多い・給料が低い/残業代が出ない

退職理由1位の「時間外労働が長い」と、「給料が低い/残業代が出ない」は関連していると思います。学生時代のアルバイトは「時給制」が多く、1時間いくらという同意のもと働いていました。例え仕事が忙しく、バイトの時間が延長されても、きちんと時給は発生していたはずです。しかし「ちょっとした時間外労働も月給のうち」「与えられた仕事以上のことをして当たり前」と考える上司も多く、就労条件の曖昧さに不満を感じるのでしょう。

<考察>
労働基準法では、「法定労働時間以上の労働をした場合には賃金とは別に時間外割増賃金を支給しなければならない」と定められているため、基本給に残業代を含む給料とする場合は、あらかじめ「定額の残業代」を取り決めなくてはなりません。

例えば1か月30時間残業をすることを見越して、その分を基本給に上乗せして支払われます。このシステムは、残業が30時間を超える場合、または下回った場合でも一律同額となります。しかし法令を遵守している会社は少数なため、企業側にも問題があると思います。

社風・体制に不満

A子は怒りながら、「こんな立派な理念を掲げているくせに、まったく現実と乖離している」と言いました。それに対して筆者は、「すぐにはできそうもないから理念なのさ。すでにクリアしていたら理念にはならない」と答えました。もちろん理念が社風に生かされて、仕事がしやすい体制づくりを行っている会社もありますが、たいていは理想論が多く、筆者の勤めていた会社でも朝礼で言わされるたびに、「なんだかなぁ」と思うような理念や社風はありました。

<考察>
企業理念は、社員が働くための意義や目標、社風はそれをどのようにすれば実現できるかの詳細、体制はそのための組織づくりです。しかしトップが念仏のように唱えさせるだけで、その意味を理解させていなかったり、理念に近づけるための改善が図られていないことが、新入社員がしらけてしまったのでしょう。

「人事評価」

学生のアルバイトは、周りからの評価をあまり気にせずに仕事をできましたが、社会人となると、積極性や自主性など数値で測れないものが評価され、給与や昇進を左右します。会社によってさまざまな基準はありますが、「評価者の主観」が入り込むことは避けられません。従て、積極的にコミュニケーションを取ったり、お世辞を言ったり、ゴマをすったりという手段に至るわけです。

<考察>
学生時代に、自分に合った人としかコミュニケーションを取ってこなかった人が、いきなり立場や年齢の違う人とコミュニケーションを取るのはとても難しいことです。ましてや、人事評価を見越してコミュニケーションを取るなど、豊臣秀吉並みな感覚の持ち主でなければ、自然には振る舞えないでしょう。

A子は、「改善を提言したが、何もしてくれない」と言っていますが、上司も組織の一員。何でもすぐに対応するのは難しいと言うことや、社内の政治も学ばなくてはなりません。

早期退職の原因

あるサイトの調べによると約5.2%の人が入社した月に退職しているそうです。社会人としての生活に慣れない新入社員と、いきなり社会の洗礼を浴びせようとする会社とのギャップが、早期退職の原因の一つではないでしょうか。

すぐにでも辞めそうな勢いのA子でしたが、「もう少し働いてから考えてほしい」と会社に留意されたそうですが、まだ火種はくすぶっているようです。A子は「今の会社を辞めて、飲食店で働く」とも言っていますが、そこも離職率が高い業界なので、なんとしたらいいものやらと、元教え子の進路に気をもんでいるのです。

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